みどころの紹介

〜化石海水型温泉〜犬吠埼温泉×千葉科学大学

〜化石海水型温泉〜
犬吠埼温泉×千葉科学大学

 犬吠埼温泉は、関東最東端の街(千葉県銚子市)にあり、温泉に入りながら太平洋を一望できる自然豊かな温泉です。これまでに、入浴すると肌がしっとりする、温まるなどの声があるものの、それを裏付ける客観的なデータはありませんでした。そこで、千葉科学大学が中心となり、犬吠埼温泉の源泉の効能を科学的に証明する研究を進めています。

  • 1億2千万年前白亜紀の地層のさらに深い場所(深度1000m以上)から湧出
  • ナトリウム・塩化物・カルシウムを多く含む強塩温泉
  • 地熱により温められた非火山性の温泉
  • 時間の経過とともに成分が析出する濁り湯
  • 保湿効果があることを実証
  • 1万年前よりも古い「化石海水型」温泉であることを実証

図. 犬吠埼温泉「黒潮の湯」の足湯

2種類の源泉の成分(1.0mg/L以上の成分を抜粋)

表. 黒潮の湯,潮の湯の温泉表

項目 黒潮の湯(犬吠埼ホテル) 潮の湯(犬吠埼観光ホテル)
泉質 ナトリウム塩化物強塩温泉
高張性・弱アルカリ性・低温泉
ナトリウム・カルシウム
塩化物強塩温泉
高張性・弱アルカリ性・低温泉
泉温 25.1 25.0
pH 7.80 7.80
湧出量 130L/min. 470L/min.

表. 陽イオン濃度(mg/L)

成分 黒潮の湯 潮の湯
ナトリウムイオン 7316 7048
カリウムイオン 34.2 16.7
アンモニウムイオン 6.7 5.2
マグネシウムイオン 157.0 46.6
カルシウムイオン 1134 1572
鉄(Ⅱ)イオン 7.4 2.8
陽イオン 計 8656 8692

表. 陰イオン濃度(mg/L)

成分 黒潮の湯 潮の湯
フッ素イオン 2.2 1.8
塩素イオン 13680 13660
臭素イオン 50.8 55.0
ヨウ素イオン 58.1 52.3
硫酸イオン 0.6 3.9
炭酸水素イオン 94.0 38.4
陰イオン 計 13890 13810

表. 遊離成分濃度(mg/L)

成分 黒潮の湯 潮の湯
メタケイ酸 34.4 25.1
メタホウ酸 77.6 72.3
非解離成分 計 112.0 97.4

表. 溶存ガス成分濃度 (mg(mg/L)

成分 黒潮の湯 潮の湯
遊離二酸化炭素 5.3 5.3
溶存ガス成分 計 5.3 5.3
犬吠埼温泉の研究

図. 黒潮の湯の源泉

 千葉科学大学では、2015年より犬吠埼温泉の価値を高めるための研究を開始し、これまでに温泉成分の解析、温泉の保湿効果の検証、源泉の年代測定を行いました。その結果、温泉のミネラル成分の量と保湿効果に関係があること、少なくとも約1万年前の古海水を起源とした「化石海水型」温泉であることが判明しました。

【温泉成分の解析】※1
犬吠埼温泉の源泉は成分の濃度が高く、湧出した時には薄い黄褐色ですが、時間の経過とともにCaやFe(Ⅲ)を含む茶褐色の浮遊物質が析出して沈殿する特徴があります。 2種類の源泉は、塩化物イオン(Cl-)やナリウイオン(Na+)を多く含み海水に近い値であったことから、海水を起源としている温泉であると考えられます。 また、マグネシウムイオン(Mg2+)やカリウムイオン(K+)の濃度は海水より低い値、カルシウム(Ca2+)の濃度は海水より高い値でした。 これらの成分は、掘削した周辺の地質(銚子層群や愛宕山層群)からの影響を受けていることが考えられます。 現在、温泉の成分と地質との関係についての調査を進めています。

表. 2015年に測定した各源泉の成分濃度(mg/L)

成分 黒潮の湯 潮の湯 海水(銚子)
Cl- 15695 14735 18480
Na+ 7663 6432 8128
K+ 22 22 171
Ca2+ 491 1337 137
Mg2+ 73 34 447

図. 各源泉の浮遊物質量(採水日から0日,10日後)

図. 黒潮の湯(採水から2日後)

【保湿効果の検証】※1
 皮膚の保湿試験は、実際の入浴シーンに近い黒潮の湯の足湯(温泉)と、同じ温度(約38℃)のお湯(水道水)に片足ずつ20分間入浴させ、入浴後のすねの角層水分量を測定しました。なお、皮膚の保湿試験は千葉科学大学倫理委員会による承認および被験者の同意を取得して行いました。
 入浴後の角層水分量は、入浴後に徐々に低下しましたが、お湯に比べて足湯の方が低下しにくいことが分かり、肌の保湿効果が認められました。温泉に含まれるミネラルは、角層中に含まれる天然保湿因子の構成成分の1つであることから、保湿性に関わっていることが考えられます。

図. 保湿試験(右足:温泉,左足:お湯)

図. 足湯入浴後の角層水分量(すね)の経時変化

●:足湯群、○:お湯群のデータを平均値±標準偏差で表示,*:足湯群とお湯群との差の検定(*p<0.05, n=23, paired t-test),+:入浴前と各測定時間との差の検定(+p<0.05, n=23, paired t-test),分散分析による検定では、足湯群とお湯群との間に有意差が認められました。

【源泉の14C年代測定】※2
14C年代測定は、地下水中の14C濃度の減少の程度から滞留時間を求めるもので、約500年〜50,000年の古い地下水の年代を測定できます。 14C年代を推定した結果、黒潮の湯、潮の湯の年代(補正)は、それぞれ10,020±80年、11,320±80年でした。 以上のことから、犬吠埼温泉の14C年代は約1万年前であることが判明しました。

表. 犬吠埼温泉の正味の14C年代(補正)※2

源泉 14C年代(補正)
黒潮の湯 10,020±80年
潮の湯 11,320±80年
犬吠埼温泉の研究発表
  1. 犬吠埼温泉の有用性-成分分析と保湿効果検証-
    平尾哲二, 手束聡子, 鈴木真綾, 木村美沙季, 山下裕司, , 千葉科学大学紀要, 10, 15-22, 2017.
    http://id.nii.ac.jp/1222/00000206/
  2. 犬吠埼温泉の源泉の放射性炭素年代
    手束聡子,山下裕司,平尾哲二,千葉科学大学紀要, 11, 25-30, 2018.
    http://id.nii.ac.jp/1222/00000234/
  3. 銚子の水, 銚子学−銚子の自然・産業・生活・歴史文化−, 23-24, 2018.
  4. Radiocarbon ages of the hot springs, the sources of Inubohsaki Onsen. Satoko TEZUKA, Yuji YAMASHITA and Tetsuji HIRAO, JPGU, 2018年5月.
  5. Study on the origin of hot spring water using the deep part of Inubohsaki Onsen’s core.
    Satoko TEZUKA and Mana Kamata,JPGU, 2020年7月.
「温泉総選挙2019」にて審査員特別賞を受賞

 銚子市の観光資源のひとつである犬吠埼温泉の価値を高める取り組みとして、千葉科学大学は銚子市および犬吠埼温泉協議会と連携し、2015年から2016年度にかけて科学的な証拠を収集しました。その結果、現代版湯治効果の価値創造に尽力したとして、犬吠埼温泉は「温泉総選挙2019」にて審査員特別賞を受賞しました。

温泉総総選挙 https://onsen ouen.jp/sousenkyo/award/2019

犬吠埼温泉の源泉を使用しているホテル一覧

温泉の色は黄褐色

犬吠埼灯台と太平洋を一望できる‘黒潮の湯’と‘潮の湯’の露天風呂

  • なし
  • なし
  • あり
  • なし

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  • 無料駐車場
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  • 人の営みに関わるみどころ
犬吠埼温泉へのアクセス

【電車・高速バス利用】
JR総武本線銚子駅→私鉄銚子電鉄外川行き約20分犬吠駅下車→徒歩約10分
JR総武本線銚子駅→バス千葉交通外川行き約20分犬吠下車→徒歩約10分
高速バス犬吠埼駅→徒歩約10分

「銚子電鉄時刻表」
https://ekitan.com/timetable/railway/line-station/287-0
「京成バス」東京駅−銚子・犬吠埼
http://www.keiseibus.co.jp/kousoku/timetable.php?id=34

【自動車利用】
東関東自動車道佐原香取ICから国道356号線約50km約60分
千葉東金・銚子連絡道路横芝光ICから国道126号線約45km約50分

犬吠埼温泉 HP 制作

千葉科学大学 2020年度 温泉ゼミ 手束、市毛、信田、神野、岩間、箱石

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